Shockwave IVLを知る

医療知識
画像出典:Shockwave Medical Japan

Shockwave IVLのpoint

  • IVL(Intravascular Lithotripsy:血管内砕石術)とはPCIで高度石灰化病変において行われる治療の1つです。
  • IVLは石灰化病変をバルーンの拡張とバルーン内部から発する衝撃波によって破砕・修正することで、血管のコンプライアンスを改善し血管狭窄部の拡張を補助します。
  • 他のアテレクトミーデバイスと異なり、ワイヤーバイアスに左右されずに石灰化の処理をすることが可能です。
  • IVLでは石灰化病変の切削を行わず、また、低圧拡張であるため、dissection(解離)、perforation(穿孔)、slow flow、no reflowなどのリスクが軽減されると考えられます。
  • 適切な手順で使用しましょう。適正手順通りでなければ効果が減弱する可能性があり、危険でもあります。

Shockwave IVLとは?

IVL(Intravascular Lithotripsy:血管内砕石術)とはShockwave Medical社のIVLシステムによる石灰化病変の破砕を行う処置のことです。2022年3月にDisrupt CAD Ⅳ試験を経て本邦で承認され、他のアテレクトミーデバイスとは異なる機序で石灰化病変へアプローチする新たな治療法となります。

PCIにおいて石灰化病変はステントの拡張不良による再狭窄やステント血栓症などのリスクを増大させます。IVLはこの石灰化病変をバルーンによる拡張とバルーンカテーテルに内蔵されるエミッターから発する音圧パルスにより破砕・修正し、ステントやDCB(Drug Coated Balloon)の拡張を補助します。

他のアテレクトミーデバイスと異なり、IVLはバルーンという従来の技術を用いたものであり、直感的な操作が可能でユーザーフレンドリーであることも強みの1つです。

原理・構造

IVLバルーンカテーテルのシャフトに内蔵されたエミッターのスパークギャップ放電により最初の音響衝撃波が発生し、その後にプラズマ蒸気バブルを発生させます。キャビテーションバブルと呼ばれるこの蒸気バブルの急速な膨張と崩壊により2次的な衝撃波が発生します1)。 この衝撃波による応力で石灰化を破砕することが従来の方法とは1番大きく異なる点です。

バルーンの拡張はキャビテーションにより発生する熱などから組織を保護し、血管壁と密着することで音圧パルスを効率的に伝達することに寄与します。

また、人体軟組織の音響インピーダンスは水(1.48×106kg/m2・s)に近いため、音圧パルスが通過しても影響はほとんどありません。石灰化病変のような音響インピーダンスの異なる界面で衝撃波エネルギーは放出され、破壊効果が生じます。
(ESWL想像すると理解しやすいと思います。)

アテレクトミーデバイスとの比較

アテレクトミーデバイスの効果はワイヤーバイアスに依存しており、切削箇所、切削量のコントロールは容易ではありません。このコントロールができていないと、perforation、slow flow、no reflowなどの合併症を引き起こします。
IVLの効果においてはワイヤーバイアスに左右されることはありません。また、低圧拡張で切削を行わないため、合併症リスクを抑えることができると考えられます。

アテレクトミーデバイスでは石灰化病変を切削しプラーク量を減少させることができますが、深在性石灰化病変には限界があります。IVLであればエミッターから3mm以内であれば音圧は保たれるため2)、深在性であっても破砕することが可能です。
また、エミッターからの音圧パルスは円周性に広がるため、病変部の偏心性か全周性かなどについても影響を受けることなく効果を発揮します。

ここまでIVLの強みの記載になってしまいましたが、弱点もあります。それは、バルーンが通過しないと治療ができないということです。IVLのバルーンはかなりデリバリー性能が悪い印象があり、石灰化病変であるためなおさらデバイスのデリバリーに難渋します。
下に石灰化治療のアルゴリズムを載せましたが、バルーンが不通過もしくは通らなそうであればアテレクトミーデバイスの使用が適切となります。

石灰化治療のアルゴリズム

画像引用:日本心血管インターベンション治療学会 C2 コロナリーIVL カテーテル適正使用指針   

上図からわかるように、OCT/OFDIのスコアであれば最大石灰角度が最も重要になってきます。最大石灰化角度が180°以下であれば3ポイントに到達することはないためIVLは使用できません。

使用時の注意点

  • スパークを発生させるにはイオンが必要であるため、バルーンの拡張には生食と造影剤を1:1で混合して用います。
  • 効率よく音圧パルスを送達するため4気圧で拡張後、音圧パルスを照射します。照射後は内腔を拡大するため6気圧(nominal pressure)までインフレーションしましょう。
  • 血流を再開させるために、治療の間隔はバルーンを収縮させ最低10秒間、バルーン容量によっては15秒あけます。
  • 音圧パルスを生成する際に発生する気泡がバルーン内に残留してしまいます。気泡は効率的な音圧パルスの送達を妨害するため、次の治療の前に陰圧をかけて気泡を除去しましょう。
  • 音圧パルスは8~10μJと非常に小さいエネルギーですが、心臓の伸展活性化チャネルを刺激し1)、心室キャプチャーをすることが多々あります。そのため治療中は心電図、動脈圧などに注視しましょう。

参考文献・引用

  1. Kereiakes DJ, Virmani R, Hokama JY, Illindala U, Mena-Hurtado C, Holden A, Hill JM, Lyden SP, Ali ZA. Principles of Intravascular Lithotripsy for Calcific Plaque Modification. JACC Cardiovasc Interv. 2021 Jun 28;14(12):1275-1292. doi: 10.1016/j.jcin.2021.03.036. PMID: 34167671.
  2. Shockwave Medical.Shockwave Medical Japan ホームページ.https://shockwavemedical.co.jp/ ,2023/5/11閲覧
  3. 日本心血管インターベンション治療学会.”C2コロナリーIVLカテーテル適正使用指針”.2022-12-1.https://www.cvit.jp/_assets/documents/news/2022/1201-1.pdf ,2023/5/11閲覧
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